12月に入って一段と冷え込んできたな、と感じる今日このごろ。
これからインフルエンザの季節ですね。
今年は(強制的に)インフルエンザの予防接種を受けたのですが、注射嫌いの私からすると苦痛で苦痛で仕方ないイベントでした。
そろそろ注射に替わるイノベーティブな医療機器は生まれないものなのでしょうか?
今回の記事はGoogleでインプレッションシェアの指標が増えた事を受けて、重要な指標である事を再認識したため現在の品質決定の基準や、その改善の方法までをまとめてみました。
インプレッションシェアとは
まずはインプレッションシェアの事をおさらいしましょう。
もう十分理解しているという方は飛ばして頂いて構いません。
弊社過去記事:【初心者向け】インプレッションシェアは重要な指標【リスティング】
インプレッションシェア(長いため以下「IS」と呼ぶ)とは端的に言えば、入稿したKWで表示出来る表示回数の最大数を100%として、その内の何%が実際に表示されたのか、という指標です。
ISは大きく分けて2つの損失率で成り立っています。
一日の上限予算が少なく、予算切れを起こしてしまって表示できなくなる「予算によるインプレッションシェアの損失率」(長いため以下「予算損失」と呼ぶ)と、競合よりも入札単価などが低くオークションに負けてしまい表示されなかった「広告ランクによるインプレッションシェアの損失率」(長いため以下「ランク損失」と呼ぶ)の2つです。
これらの関係性は、
100%=IS+予算損失+ランク損失
となり、「IS」が表示できた割合、「予算損失」「ランク損失」が表示できなかった割合となります。
予算損失を最小化すべき理由
ではISの概念をおさらいした所で最大化すべきと私が考える理由を挙げていきたいと思います。
1.機会損失が抑えられる
まずは最も解りやすい事柄として機会損失が挙げられます。
IS自体が機会損失の割合を指している指標なので当然と言えば当然ですね。
ここではなぜ予算損失を無くす事で機会損失の最小化に繋がるのかを説明します。
ランク損失よりも予算損失を最小化する方が良い理由
例として一日の上限予算設定が10,000円のキャンペーンがあるとします。
CPCは125円で80クリックを獲得している場合、広告ランクによる損失を改善するためにはクリック単価を上げる必要があります。
クリック単価を上げる訳ですから多くの場合CPCも上がります。
しかし、一日に利用出来る金額は10,000円のままです。
例えば125円のCPCが150円まで上がったとすると80回だったクリック数は67回まで落ちる事になります。
掲載順位も同時に上がるはずですのでクリック率も上がるとすると表示回数は更に減少してしまう事になります。
上記の試算表は表示回数の母数を12,500回だったとした場合の各項目の変動を試算したものです。
あくまで試算ですがCPCが25円ずつ変動した場合、クリック率は0.2%ずつ変動するという条件で算出しています。
コストが固定されている以上CPCが上がるとクリックは必然的に減少します。
引き上げ側を見て頂くと分かる通り、ランク損失を改善しても結局上限予算によってクリックが頭打ちしてしまいます。
表示回数を最大化して機会損失を最小化するにはランク損失を改善するよりも予算損失の改善が有効な場合が多いのです。
抑制しすぎるのも危険
こちらは余談ですが、表上の75円の時に推定の表示回数が母数を上回っています。
これは引き下げすぎでコストを使えなくなっている状態です。
表示回数が母数を超える事はないため、表示回数は最大値の12,500回、クリック率は掲載順位も下がっているため0.6%のままでクリック数を算出すると75回となり、下げすぎてもクリック数が減少してしまう事になります。
このようにコストを固定しままのランク損失の改善では機会損失は反って増えてしまいます。
もちろん、品質などの要因で必ずしも上記のような動きが起こるわけではありませんが、理屈上ではランク損失の改善で機会損失を解消するためには一日の上限コストの引き上げが必須です。
例外
当然ですが例外も存在するため例外となるケースを一部記載します。
- 上位表示の方がCVRが高い商材
- 競合他社が多すぎて一定の掲載順位を下回るとクリック率が異常に下がる場合
- そもそも予算損失が出ていない
2.データの精度が増す
検索ユーザーのすべてが購入を検討しているワケではありません。
「ちょっと気になって調べてみよう」や「買うか買わないかを迷っている」という人も多いはずです。
また、購入に関しては決定していても「どこで買うか」が決まっていない事も多いです。
そのため、同じKWを検索しているユーザー全体でもCVに至る確度には濃淡があります。
予算損失はオークションにすら参加できない
しかしながら、ユーザーの確度の濃淡に対して表示をさせるさせないをコントロールする事は非常に難しいと言えます。
少なくとも手動で実現するのは非現実的です。
拡張CPCや自動入札系の機能は購入に対して意欲が高いユーザーの時に入札単価を上げる機能ですが、予算による損失が出ている場合はそもそも入札にすら参加できません。
一日の内のどのタイミングで確度の高いユーザーが検索を行うかは誰にも分からりません。
質の良いユーザーが検索した時点でコストを使い切ってしまっていたとなると折角の拡張CPCや自動入札も宝の持ち腐れです。
これらの機能は大前提としてい予算による損失が無い状態で使う事をオススメします。
誤った判断に繋がる危険性
たまたま確度の高いユーザーが一日の早い段階で検索してCVが獲得できた時と、確度の高いユーザーがコストを使い切った時に検索してしまった時とでは成果数にかなりの差がでます。
この状態のデータは信憑性に欠けるものです。
上の段落の例で言えば、一日の早い段階にCV獲得がたまたま偏った事を持ってCV獲得に繋がるのは早い時間帯だからコストを寄せようなど、誤った判断をしてしまう可能性があります。
信憑性の低いデータになる事を避けるためにも予算損失は最小にした方が良いと考えられます。
3.統計優位性が増す
前項のデータの信憑性に近しいのですが、こちらはシステム的な話となります。
統計優位性と相対クリックとは
GoogleもYahoo!もですが、品質の判断には相対クリック率と統計優位性を重要なファクターと位置づけているようです。
相対クリック率とは同じKWでの出稿している他社とのクリック率の比較です。
クリック率が他社より高ければ品質も高くなるという事ですね。
統計優位性とは簡単に言うと、そのデータの母数も加味しようと言う事です。
例えば100回の表示に対する1クリックの1%と、100万回の表示に対する1万クリックの1%は同じ1%でも、そのデータの信憑性は母数が大きいほど高くなります。
大まかに言えば、100回の表示に対する2クリックの2%と、100万回の表示に対する1万クリックの1%ならば相対クリック率が高い2%より、1%をより高く評価するという事でもあります。
前々項で予算損失を最小化した方が表示回数が増えるという話をしましたが、表示回数が増える事で統計優位性も増すため品質にも影響を与えることになります。
そのため、システム上の観点からも予算損失は最小化した方が有利になるはずです。
予算損失を改善するための対策
ではどのように予算損失を改善すべきかという話ですが、大きく3通りの方法が考えられます。
- 入札単価を下げる
- 一日の上限予算を上げる
- 品質を改善しCPCを下げる
一日の上限予算を上げる
まずは一日の上限予算を上げる方法です。
予算を増額して予算損失分を埋めてしまうやり方で、これが一番の正攻法です。
クリック率や掲載順位の悪化といったリスクも無いため広告費さえ確保できれば一番良い方法と言えます。
余談ですがリスティング広告などの運用型広告は適正予算での運用が成果獲得への近道です。
上述したようなデータの蓄積や信憑性を考えると適正予算が非常に重要である事が解っていただけるかと思います。
ある意味では予算損失が出るという事は適正予算ではないというアラートでもあります。
どのようなケースで使えるか
基本的には予算損失が発生しているのであればどのようなケースでも使える手法です。
あくまで予算さえ確保できれば、という条件が付きますが。
現状のクリック率や掲載順位を維持して表示回数、クリック数を伸ばす事が出来るためCVRも維持されると考えられ、CV数増加も期待できます。
メリットとデメリット
- メリット :掲載順位やクリック率などを犠牲にせずに機会損失を最小化できる
- デメリット:お金が掛かる
入札単価を下げる
一番手っ取り早い方法がこれです。
1クリックあたりの単価を下げてコスト内でクリック可能な表示回数を増やします。
上述の例外に記載したようなケースでは使えない事もありますが、大抵のケースでは入札単価を落とすことで予算損失は改善できます。
当然ですがクリックが急激に落ちていないかなどは確認する必要があります。
どのようなケースで使えるか
ある程度上位で掲載できているアカウントで実施する事をおすすめします。
下位表示しか出来ていないアカウントでは広告掲載がされなくなってしまう可能性があります。
部分一致キーワードなどのボリュームのあるキーワードを中心に抑制するなど、抑制の仕方によっても得られる結果が変わるため単純に入札単価を落とせば良い結果が得られる訳では無いという点にも注意を払う必要があります。
メリットとデメリット
- メリット :コストを掛けずに機会損失が最小化される
- デメリット:掲載順位が落ちるため競合優位性に影響を与える可能性がある
品質を改善しCPCを下げる
理想論としては品質改善です。
CPCも上げず、掲載順位も下げず、コストも掛けずに予算損失を改善する方法ですが、品質は一朝一夕で改善されるものではありません。
品質改善のためにキーワードの精査、広告文の変更はもちろん、サイトの修正も重要ではあると思います。
それらがクリック率に反映されたり評価されたりして品質が上がるのには時間がかかってしまいます。
では、品質を簡単に改善するための方法は何でしょうか?
それは入札単価を上げる事です。
上述した通り相対クリック率が品質決定の重要なファクターであるため、時間を掛けずに品質を上げるには入札単価を上げるのが近道です。
しかし「入札単価を上げたくないから品質を上げよう」「品質を上げるために入札単価を上げよう」という矛盾が発生してしまいます。
長期的な目線での品質向上はもちろん重要ですが時間もかかり、競合他社の入札強化でひっくり返されてしまう可能性も高いです。
どのようなケースで使えるか
すぐさま改善する必要の無いケース、または短期的な改善と併せて実施するケースで使えます。
前述のコストの引き上げや入札単価の抑制と相反する施策とならないため、同時並行で行うのがベストです。
特に競合他社が多く、CPCが高くなりがちな商材は長期的な戦略として品質改善は有効だと思います。
ただし、品質決定のファクターがそれぞれどの程度のウェイトなのか、公表されている指標のみで決定されているのか、など品質に関してはブラックボックスとなっている部分も多いため過度な期待は禁物です。
今後、GoogleやYahoo!が重要とする指標を変えるという事もありえます。
メリットとデメリット
- メリット :上手くいけばコストも競合優位性も犠牲にせずに機会損失を最小化できる
- デメリット:手間と時間がかかり、競合他社の動きで覆される可能性がある
まとめ
予算損失を最小化は機会損失も最小化され、信憑性の高いデータになり、システムからも評価されやすくなります。
短期的な改善手法として「予算を増やす」「入札単価を下げる」方法があり、長期的な手法は「品質向上」です。
それぞれにメリット、デメリットがあるため吟味して実施していきたいですね。