前置き
日々の運用、お疲れ様です。
今回は、1つの都道府県に対して、1つのキャンペーンを設定・構成した場合、 どのような運用結果が得られるのか、また、実際に運用していく中で、メリットとデメリットは、 どのようなものがあるのか、お伝えしたいと思います。
まず、今回の「1つの都道府県に対して、1つのキャンペーンを設定・構成」とは、 どのようなものなのか、概要を解説致します。
例えば、Aというクライアントにおいて、全国47都道府県に対して、「りんご」と「みかん」のEC通販をしていると仮定します。
クライアントA:以下、2つの商品を通販しているECサイト
「りんご」
「みかん」
この場合、通常のキャンペーン構成で、発想するなら、以下のようになるかと思います。
【通常のキャンペーン構成】
キャンペーン①:CP「りんご_通販」
→ 格納キーワード:kw「りんご 通販」など。 ※配信エリア:全国
キャンペーン②:CP「みかん_通販」
→ 格納キーワード:kw「みかん 通販」など。 ※配信エリア:全国
※おそらく、この場合のキャンペーン数は、「2つ」で十分かと思います。
つまり、商品別・キーワードの性質別に、キャンペーンを分ける構成となります。
反対に、1都道府県1キャンペーンの場合は、以下のようになります。
【1都道府県1キャンペーン構成】
キャンペーン①:CP「愛知県_エリア」
→ 格納キーワード:kw「りんご 通販」「みかん 通販」など。 ※配信エリア:愛知県
キャンペーン②:CP「東京都_エリア」
→ 格納キーワード:kw「りんご 通販」「みかん 通販」など。 ※配信エリア:東京都
キャンペーン③:CP「大阪府_エリア」
→ 格納キーワード:kw「りんご 通販」「みかん 通販」など。 ※配信エリア:大阪府
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×47CP
※各キャンペーンに格納するキーワードは、通常のキャンペーン構成で使うものと同じで、各キャンペーン全て共通です。
つまり、1つの都道府県に対して、1つのキャンペーンで分ける構成となります。
以上のように、通常のキャンペーン構成は、【アカウント全体】をベースに、構成を発想・運用するのに対して、 1都道府県1キャンペーン構成は、【キャンペーン単位】をベースに、構成を発想・運用することになります。
それでは、この「通常のキャンペーン構成」と「1都道府県1キャンペーン構成」との前後比較を、事例を元に、お伝え致します。
事例
まず、今回のクライアントにおいて、「1都道府県1キャンペーン構成」にした理由として、 クライアントが身をおく業界的なものとして、都道府県別に、収益率が異なり、 各都道府県に、目標コンバージョン単価を設定する必要があった為、 その運用の適正化を図る目的がありました。
それでは、「通常のキャンペーン構成」と「1都道府県1キャンペーン構成」との前後比較(30日間)を見てみることにします。
上記データの通り、「1都道府県1キャンペーン構成」にしたことによって、広告の表示回数が、 152%増加しております。
この、広告の表示回数が増加した要因に関して、あくまでも、推測ですが、 これまで、管理画面上の数値では把握できなかった、(潜在的な)都道府県別の、日予算による広告表示回数の損失率を緩和した結果だと考えています。
また、広告の表示回数が増加したことにより、クリックされる機会の母数が増えた結果、クリック数も増加傾向に有ります。
ただ、クリック率が低下傾向にありますが、この要因として、入札金額の抑制によって、 掲載順位が低下した影響によるものと思われます。
クリック率の低下にあたっても、広告の表示回数を、これまでよりも増加できた分、 クリック率の低下を、補完した形となります。
そして、入札金額の抑制により、クリック単価を抑えることができた為、コンバージョン単価も低下傾向に有ります。
以上のように、同じ条件下(ご予算)でも、「1都道府県1キャンペーンの構成」にしたことによって、 通常のキャンペーン構成と比較して、 表示回数増→クリック数増→低クリック単価・コンバージョン単価改善 につながったものと考えられます。
次に、各都道府県別の前後比較(30日間)データを見てみたいと思います。
47都道府県分になると、データ量が多くなる為、一部エリアのみとなりますが、各都道府県において、 軒並み、クリック単価が低下傾向にあることがわかります。
元々、このアカウントでは、「1都道府県1キャンペーンの構成」にする前から、地域の入札単価調整を利用して、 都道府県別に、入札金額の強弱をつけておりましたが、「1都道府県1キャンペーンの構成」にしたことにより、 各都道府県に対して、目標コンバージョン単価にするための、適切なクリック単価まで、調整することができています。
※地域の入札単価調整に関しては、以下をご参照ください。
これまでは、「1都道府県1キャンペーンの構成」にしたことによる良い部分のみに着目してきましたが、 決して、良い部分のみではありません。
前述の通り、今回の「1都道府県1キャンペーンの構成」は、1つのキーワードに対して、47個のキャンペーンを作成することになる為、 通常のキャンペーン構成と比較し、入札調整の負荷が、単純に、47倍されます(それほど、大きくはないと思いますが)。
また、「1つのキーワードに対して、47個のキャンペーンを作成する」ということは、他のキーワードに関しても、 同じことが言え、広告文の量も、それに応じて、多くなり、設定変更の際には、細心の注意が必要です。
そして、47個のキャンペーンを作成することになる為、通常のキャンペーン構成であれば、1つのキャンペーンに対して、 日予算を利用して、コストコントロールをしておけばよかったものが、「1都道府県1キャンペーンの構成」にしたことによって、 日予算によるコストコントロールが、ほぼできないと考えておく必要があります。
以上、「1都道府県1キャンペーンの構成」にしたことによる、メリット・デメリットを、まとめてみました。
メリット
- 広告の表示回数を増やすことができる可能性がある。
- (表示回数が増えることによって、無闇にクリック単価を上げずに)クリック数を増やすことができる可能性がある。
- (通常のエリア別調整率よりも)各都道府県に対して、適切なクリック単価を元に、運用することができる。
- (通常のエリア別調整率よりも)各都道府県の特性に配慮しつつ、運用することができる。
デメリット
- 運用コントロールが取りづらく、運用負荷が、通常よりも大きくなる。
- 1都道府県1キャンペーンという構成上、日予算による、コストコントロールが難しくなる。
- コストコントロールが難しい為、ご利用金額の急騰が予想される(つまり、十分なご予算が必要)。
- 1都道府県1キャンペーンにするにあたり、必要十分なkwボリュームを、正確に把握する必要がある。
- 通常の構成よりも、キーワード数・広告文数が、多くなる。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
これまで、お伝えしましたように、今回の「1都道府県1キャンペーンの構成」は、 通常のキャンペーン構成とは違い、特殊な構成であるとご理解いただけたかと思います。
特殊なキャンペーン構成であることから、通常のキャンペーン構成と同じ運用イメージで、 運用してしまうと、運用者にとっても、クライアントにとっても、非常に負荷のかかりやすい、 いわば「諸刃の剣」と考えています。
その為、使うタイミングをよくよく吟味して、余裕を持って、取り組むことをお勧め致します。